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さいナビ!管理人
臨床心理士、公認心理師
臨床心理士として、精神科クリニックや企業でカウンセリングをしています。うつ病・不安症・強迫症に対する認知行動療法、メンタル不調で休職した方の復職支援などを専門としています。

【強迫性障害とは?】代表的な症状と原因、治療法について

手洗いをやめたいのにやめられない・・・
鍵や火の元の確認をやめたいのにやめられない・・・
そのほかにも、車の運転時の確認や、業務上必要なチェックにおける確認、自分で決めたジンクスルールに縛られてしまう、などなど・・・

自分でもおかしいんじゃないか?と思いながらも、確認の習慣が繰り返しになってしまってつらいという方は多くいらっしゃいます。

その背後には「強迫」と呼ばれるメカニズムが働いており、仕事や生活に大きな支障が生じている場合には、精神科で強迫性障害の診断がつけられます。

欧米圏では強迫性障害はうつ病パニック障害と並んで広く知られている病で、有名人のカミングアウトも頻繁に行われています。
一方、日本ではまだあまり知名度はなく、強迫性障害の症状をつらいと感じながらも、誰にも言えずに1人で抱えておられる方もいらっしゃるかと思います。

本記事では強迫性障害の診断基準症状と原因治療法について解説しますので、上記のようなことでお困りの方はぜひ一度チェックして、参考としていただければ幸いです。

目次

強迫性障害とは?代表的な症状と診断基準

強迫性障害とは?代表的な症状と診断基準

強迫性障害の診断基準

強迫性障害はアメリカ精神医学会の診断基準DSM-Ⅳまで不安障害の一種であると考えられていましたが、最新のDSM-5では不安障害とは独立した異なる疾患として分類されています。
強迫性障害の生涯有病率は2%前後で、50~100人に1人はかかる病気と考えられています。

強迫性障害の診断基準として、以下の3点が挙げられています。

①強迫観念または強迫行為のどちらか、もしくはその両方が存在する

強迫観念とは・・・
(1)繰り返される持続的な思考、衝動、またはイメージで、それは障害中の一時期には侵入的で不適切なものとして体験されており、たいていの人においてそれは強い不安や苦痛の原因となる
(2)その人はその思考、衝動、またはイメージを無視したり抑え込もうとしたり、または何か他の思考や行動(強迫行為を行うなど)によって中和しようと試みる

強迫行為とは・・・
(1) 繰り返しの行動(例:手洗い、順番に並べる、確認する)、心の中の行為(例:祈る、数を数える、声を出さずに言葉を繰り返す)であり、それらの行為を行うように駆り立てられていると感じている 
(2) 行動や心の中の行為は、苦痛の予防、緩和、恐ろしい出来事や状況を回避することを目的としているが、それらの行為は状況に対して現実的、有効的ではなく明らかに過剰である

②それらの強迫観念もしくは行為が時間を浪費させるまたは、苦痛を伴い社会的機能、人間関係に障害を与えている。

強迫観念や強迫行為によって、仕事やプライベートに支障が生じていたり、苦痛を感じていたりすることが、診断基準としては重要となります。

反対にいえば、強迫らしい癖や習慣などがあっても、それによって本人周りの家族職場の同僚などが困っていなければ、強迫性障害の診断には当てはまらないといえます。
(本人がそこまで困っていなくても、家族は大変迷惑しているというケースは多いです。)

③その障害は、以下のような精神疾患ではうまく説明されない。全般不安症、うつ病、統合失調症

他の精神疾患では説明できないことが、除外基準として設けられています。
これについては、精神科の診察の中で過去のエピソードを参考にしながら精神科医が鑑別していくものであるため、実際に診察で相談してみなければ分かりません。

強迫性障害の代表的な症状

以下に強迫性障害の代表的な症状を挙げます。

多くの強迫観念は洗浄・確認・回避の行動パターンを取ります。
強迫を分類する際は、行動よりも恐怖の対象によって分類した方が治療的であると私は考えているので、以下は恐怖の対象によって分類します。

不潔恐怖

過剰に手洗いアルコール消毒入浴洗濯などを繰り返す。ドアノブや電車の手すりなど、不潔だと感じるものを恐れて、触れない。
恐怖の対象としては、漠然とした汚れのイメージ・細菌・ウイルス、そのほかにも穢れなどの宗教的なニュアンスを伴ったものなど様々です。いわゆる潔癖症です。

火事・空き巣・忘れ物恐怖

家を出る外出時によく出てくる強迫です。戸締まりガス栓電気器具のスイッチや忘れ物などを過剰に確認する(何度も確認する、じっと見張る、指差し確認する、手でさわって確認する、写真で撮って確認するなど)。
恐怖の対象としては、自分のミスや責任で家族や隣人に迷惑がかかる、責められる、自分の大切なものを失うといった漠然としたイメージが多いです。

加害恐怖

加害のイメージがより強いタイプです。誰かに危害を加えたかもしれないという不安がこころを離れず、新聞やテレビに事件・事故として出ていないか確認したり、警察や周囲の人に確認したりする。
車や自転車の運転中に、頻繁に振り返ったり、Uターンして確認したり。
そのほか、スーパーで万引きしたかもしれないという恐怖や、自分の毒を広げたかもしれないといった恐怖などもあります。

性感染症恐怖

HIVなどの性感染症にかかっているかもしれないと思い、ネットでの情報収集と性病検査を繰り返します。自分の将来がダメになる、大切なパートナーや子供に性感染症が移ることなどが恐怖のイメージとして多いです。

ジンクス・ルール破り恐怖

自分の決めた手順でものごとを行わないと、なにか恐ろしいことが起きる気がするという不安から、どんなときも同じ方法で、仕事や家事をしなくてはならない。
必ず、白線を踏んで帰らないといけない、右足で3回床をたたかないといけないなど、人によって様々です。

数字へのこだわり

不吉な数字・幸運な数字に、縁起をかつぐというレベルを超えてこだわる。
4や9などの数字を見たら、頭の中から必死に追い出すなど、人によって様々です。

物の配置、対称性などへのこだわり

物の配置に一定のこだわりがあり、必ずそうなっていないと不安になる。
思い通りに並んでいないと、置きなおしたり、補うために物を捨てたりします。

強迫性障害の原因

強迫性障害の原因

発症には、性格、生育歴、ストレスなど、さまざまな要因が関係していると考えられていますが、なぜ強迫性障害になるのかの明確な原因は分かっていません

脳内の神経伝達物質であるセロトニンの働きに異変が生じることが関係しているという指摘もあれば、前頭葉の血流に異常が生じていることが影響しているという指摘もあります。

性格傾向としては責任感が強く真面目な人完璧主義の人がなりやすく、生活や仕事上の変化があった際(ストレスがかかった際)に物事がうまくいかなくなったことをきっかけに、強迫観念や強迫行為が増悪するケースがあります。
元来の性格傾向と障害の境界線が不明瞭であるため、最初は軽症であっても症状を何度も繰り返すうちに悪化し、発症から精神科を受診するまでに10年以上経過しているケースも多くあります。

発症の明確な原因は明らかになっていませんが、一方でなぜ症状が続くのか、なにが影響して症状が悪化するかについては分かっていることも多いため、積極的に治療に取り組めば症状を抑えることや、治療することも可能です。

強迫性障害の治し方(代表的な治療法)

強迫性障害の治し方

強迫性障害の治療では、薬物療法曝露反応妨害法(ERP)の組み合わせがスタンダードとされます。
この2点について以下に解説します。

薬物療法

上記のように、セロトニンの働きが影響していると考えられているため、治療薬としてはSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)が主に用いられます。

少量の服薬から始めて徐々に量を増やしていき、基本的には長期間にわたって服用し続けることが必要となります。
副作用として、飲み始めの2週間ほどは吐き気などが生じることがありますが、一般的には数週間で慣れていくケースが多いです。

服薬にあたっては、効果を感じるまでに必要な期間や副作用など、適宜、主治医と相談しながら量を調整していきましょう。

曝露反応妨害法(ERP)

強迫性障害の治療には、認知行動療法の技法である曝露反応妨害法(ERP)が有効とされます。

インターネットや本で曝露反応妨害法を学び、本人自身で、あるいは家族やパートナーが率先して曝露反応妨害法を行われていることもありますが、なかなかうまくいっていないケースが多いです。

うまくいかない原因としては、①本人にとっての恐怖対象が明確でないまま曝露を行っているケース②家族やパートナーが本人の安心獲得のための行動(確認や手洗いなど)に部分的に付き合ってしまうケースの2点が主です。

以下に、曝露反応妨害法の要点を解説しますが、実践するうえでは強迫性障害の治療経験の多い専門家(臨床心理士や公認心理師)とタッグを組みながら実践することをお勧めします。

1.セルフモニタリング

セルフモニタリングとは、毎日の自分の活動や、頭に浮かんでくる心配事を書き出し、不安や恐怖や身体感覚を明確にしていくことです。

強迫性障害の治療では、自身が避けている恐怖対象(最悪な状況やイメージ)を明確にしていく必要があります。
恐怖対象を明確にするためには、自分の頭の中に頻繁に浮かんでいる考えやイメージ、不安に伴う身体感覚を日記のように書き出していくことが役に立ちます。

また同時に、不安の強度を数値化していくことも治療を通して大切な訓練となります。
強迫治療を行う心理士のもとでは、セルフモニタリングのための記録表が渡されると思いますので、その記録を通して、自分の不安や恐怖を明確にしていきましょう。

2.エクスポージャー

強迫性障害の治療では、自分の恐怖対象に自ら接近すること、不安や恐怖を喚起する行動を自ら取ることが有効であり、これをエクスポージャー(曝露)と呼びます。

たとえば、「高所恐怖症の人がバンジージャンプで崖から飛び降りる」ようなことです。

同様に、不潔恐怖の方では「公衆トイレの便器に触る」「電車のつり革に触る」などがエクスポージャーになります。
家事・空き巣恐怖の方では「ガスの元栓を開けたまま家を出る」「玄関の鍵を開けたまま家を出る」などがエクスポージャーになります。

なぜエクスポージャーが有効であるかというと、自分にとっての恐怖対象がそれほどの恐怖感をもたらすようになったのには、「強迫行為」と呼ばれるこれまで行ってきた安心感を得るための″行動″や″習慣”が大きな影響力を持っているからです。

ある日突然、強迫性障害になるということはありません。
毎日の習慣としての繰り返し、確認や安心を得るための行動を続けた結果、以前よりもより僅かな不安や恐怖にも耐えられなくなってしまった状態が強迫性障害です。

そのため、強迫性障害の治療では、自身を不安にさせる新たな行動習慣を繰り返し繰り返し行い、再び根付かせていく必要があります。

3.反応妨害(儀式妨害)

エクスポージャー反応妨害は必ずセットです。

せっかく勇気を出してエクスポージャーをしても、その際に強迫行為を行ってしまうと、強迫行為によって不安や恐怖が下がるという安心感(スッキリ感)を再学習してしまうため、治療上は逆効果になってしまいます。

思い切って強迫行為をせずにエクスポージャーする体験を増やしていくことが大事なのです。

つまり上記に挙げた例でいうと、不潔恐怖の方は、「トイレの床を触った汚い身体のまま、手洗いやシャワーはせずにベッドに入って寝る」ことが大切です。
火事・空き巣恐怖の方は、「目を閉じて人通りの多い繁華街を歩き、後ろは振り返ったり戻ったりはせずに家に帰る」ことが大切なのです。

4.振り返り

エクスポージャーと反応妨害を行ったあとは、必ずセルフモニタリングと振り返りをしましょう。

自分の不安や恐怖の身体感覚がどの程度強まったか?、それによってどんな悪い結果が生じたか?、これまでの認識と異なる新しい発見はなにかあったか?、これらについて振り返りを行います。

できれば、心理士などの専門家とともに振り返りを行う方が良いでしょう。

まとめ

いかがだったでしょうか。
強迫性障害は日本ではまだ一般には十分に知られておらず、誰にも打ち明けられないまま1人で抱えておられる方の多いお悩みです。

本記事をきっかけに、専門家の意見を聞いてみたいという方は、お近くの精神科や心療内科を一度受診してみることをお勧めします。
認知行動療法を受けたいという方は、強迫性障害の治療経験を多く持つ臨床心理士を訪ねてみることも良いでしょう。

本記事の参考資料や、参考となる書籍を以下に載せますのでご参考ください。

1人で抱えてきたお悩みを自分以外の誰かに相談し、解決のために一歩踏み出すことを心より応援しています。

参考資料

コクランレビュー(2007)【OCDに対するCBT vs 一般治療】

松永(2012)強迫性障害の現在とこれからーDSM-5にむけた今後の動向をふまえてーhttps://journal.jspn.or.jp/jspn/openpdf/1140091023.pdf

参考書籍

原井宏明・岡嶋美代(2012)やさしくわかる強迫性障害

みやざき明日香(2018)強迫性障害です!

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