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さいナビ!管理人
臨床心理士、公認心理師
臨床心理士として、精神科クリニックや企業でカウンセリングをしています。うつ病・不安症・強迫症に対する認知行動療法、メンタル不調で休職した方の復職支援などを専門としています。

パニック障害になりやすい人の特徴と、言ってはいけない言葉【家族・恋人向け】

パニック障害は、なりやすい人がいるわけではなく、誰にでも発症する可能性がある病気です。実際に、家族や友人・恋人がパニック障害になってしまい、どのようにサポートしたらいいか悩んでいるご家族や恋人の方もいらっしゃるかと思います。

本記事では、家族・恋人を対象に、「パニック障害の方との、適切な向き合い方」をご紹介します。

周囲の家族や恋人・友人が上手に接してあげることで、パニックに苦しむ本人も過剰に自分を責めることなく生活できるようになり、結果的に日々の生活が楽になっていくでしょう。

パニック障害は決して「家族や恋人のせい」ではありません
ただ、周囲の人が本人にとっての大切な支えになることはありますので、この記事を読んで、本人との向き合い方について考えるきっかけとしてもらえれば幸いです。

目次

パニック障害になりやすい人の特徴

パニック

パニック障害と性格傾向との間に関連性はないとされています。また、発症する原因についても明確な原因は分かっていません。ですが、不安や恐怖を敏感に感じやすい性質と、遺伝的要因や環境要因が影響しているのではないかと考えられています。

また、発症年齢としては、20代など比較的若いうちに発症する傾向があります。性差としては、男性よりは女性の方が約3倍ほど、発症する確率が高いとされています。

パニック障害になりやすい人というのはありませんが、パニック障害の人の特徴として、不安や恐怖を感じやすいという傾向があります。(もともとそうだったのか、パニック障害になることでそうなったのかの因果関係までは不明です。)

ここでは、パニック障害の人の特徴を紹介します。パニック障害の方が普段、どのようなことを考えて生活しているのかを理解できると、家族・恋人の方が取るべき行動も判断しやすくなります。

では、早速紹介していきます。パニック障害の人の特徴の例として、

  1.     不安感が強く、心配性
  2.     完璧主義で、頑張り屋
  3.     人の顔色をうかがい、自己犠牲をいとわない

などの特徴が挙げられます。それぞれについて詳しく説明します。

① 不安感が強く、心配性

パニック障害という疾患自体、広く「不安障害」というジャンルに含まれることからも分かる通り、パニック障害の方には、人一倍不安感が強く、心配性な方が多いです。

具体的には、「人見知りが強いこと」「閉所を極端に怖がること」「大きな失敗や周囲に迷惑をかけるんじゃないかとビクビクしている」などが例として挙げられます。(※必ずしもこれらに当てはまるわけではありません)

このような気質の方は、職場や学校で常に緊張状態を強いられるため、心が休まらず、疲労を溜め込みやすいです。
そして、緊張による疲労やストレスがよりパニック障害を増悪し、慢性化してしまうという悪循環に陥りやすい傾向にあります。

② 完璧主義で、頑張り屋

パニック障害の方の中には、完璧主義で、熱心に仕事や勉強に取り組む方が多いです。
細部まで徹底的にこだわって努力するため、時には良い結果が出ることもあります。

しかし、「完璧にやらないと気が済まない」という心情は、ある意味、強い強迫観念のようにもみえます。

「仕事が忙しい」「家事や育児で毎日息つく暇もない」など、精神的に追い詰められた状態が続いているにもかかわらず、「それでも休まず、完璧を目指して頑張ろう!」と意気込んでしまった結果、疲労や緊張感が強い状態が続き、パニック障害を増悪させていしまうことがあります。

まずは自身の緊張感や疲労感に気づき、適度な休養を取れるようになることが、治療の第一歩ともいえるでしょう。

③ 人の顔色をうかがい、自己犠牲をいとわない

パニック障害の方には、自分より他人のことを過度に優先する方が多いです。

この根底には、「人の機嫌を損ねて、面倒な問題を起こしたくない」、「人に迷惑をかけたくない」、「自分には価値がない」などなど、その人独自の“凝り固まった信念”のようなものがあります。

こうした考えそれ自体が悪いわけではありませんが、こうした考えによってパニック障害を増悪させる行動につながるケースは往々にしてあります。

例えば、無理なお願いをされた時でも、断らずに引き受けてしまい、気づかない内に気疲れやストレスを溜め込んでしまったり、「電車に乗って倒れて、他人に迷惑かけたらどうしよう?」と心配になって、電車をより避けるようになるなど、パニック障害をどんどん悪化させてしまう行動につながることがあります。

以上のような特徴が、パニック障害の方には多く見られます。
では、その周囲の人は、病気を患ってしまった本人に対して、どのような向き合い方をしていけばいいでしょうか。

パニック障害の家族や恋人とどう接すればいい?

① パニック障害の症状をまずは理解しよう

パニック障害の方が実際に悩んでいることの1つに、「パニック発作や予期不安を説明しても理解してもらえない」ということがあります。
確かに、パニック障害ではない人が「美容室が怖い」「電車に乗れない」といった気持ちをすぐに理解するのは難しいでしょう。

ですが、想像力を膨らませてみましょう。
パニック発作への恐怖心は想像を絶するほど大きいものです。

身近な例えを用いるとすれば、「パニック障害の方が電車に乗ること」は、「高所恐怖症の方がバンジージャンプを飛ぶこと」のように怖いことです。

これらの事実を家族や恋人の方がしっかりと意識していれば、どういう言葉をかけてあげれば良いのか、考える際の材料になるでしょう。

② パニック障害の人に言っていい言葉と、言ってはいけない言葉

パニック障害の方と話す時、NGな発言がいくつかあります。それは

  • 「パニック障害は、気の持ちようで治るだろう」
  • 「心が弱いから、そんな病気になるんだ」
  • 「精神科に行くなんて、恥ずかしい」

などの追い詰めるような言葉です。
まず、パニック障害は心の病気というより、脳の病気です。
「足の骨折」や「皮膚の炎症」と同じで、「脳が引き起こすパニック発作」も、身体的な病気の一つです。

そんな状態の人に「気合いでどうにかなる」「もっと頑張れ」などの言葉をかけると、本人はより焦りを感じ、治らない自分に失望してしまう可能性があります。
実際、パニック障害を患った人の内、50~60%の人がうつ病など他の精神疾患を併発しています。

パニック障害の方にかけてあげるべき言葉は

  • 「少なくとも味方でいるから」
  • 「自分のペースで治していけばいいよ」
  • 「家では自由に過ごしていていいよ」

などの、今のありのままの状態を受け入れていることを示す言葉です。

よく、家族や恋人が本やネットで治療技法を学び、良かれと思って本人に具体的なアドバイスすることがありますが、残念ながら逆効果になってしまうケースが非常に多いです。

もし本人が治療を始めるならば、精神科やカウンセリングルームなどに通い、専門的な治療者のもとで行うのが良いでしょう。
治療は一朝一夕にはいかず、時に本人が自分を責めてしまう可能性もあるため、そんな時のためにも家族や恋人は、本人の存在が絶対に否定されない安全な場所であり続けることが何よりも大事なのです。

積極的に介入してポジティブな言葉を掛けてあげるよりも、本人がのびのびと生活できるように促す言葉を意識しましょう。
本人にとって快適な環境が整うことによって、パニック障害が治るきっかけを掴めることも多々あります。

③ 心療内科で、カウンセラーやお医者さんに相談する

家族や恋人にパニック障害らしい症状があり、本人がそのことで苦しんでいるようだったら、まずは精神科(心療内科)の受診や、身近なカウンセリングルームを勧めるのもよいでしょう。
薬物療法認知行動療法と呼ばれる治療法によって、早ければ数か月〜半年程度で寛解状態に至る患者さんもいらっしゃいます。

「心療内科に行くのは怖い、恥ずかしい」と思われる方もいるかと思いますが、心療内科に通った人の中には、「もっと早く病院に行っておけばよかった」と感じる方もいらっしゃいます。

繰り返しになりますが、パニック障害は心の病気ではなく、脳の病気です。足や皮膚と同様に、脳も身体の一部であり、いつもと違うという異変を感じたら、まずは病院で診てもらうのがよいでしょう。

無理のない範囲で良いので、家族や恋人でパニック障害に苦しむ方がいれば、軽く背中を押すくらいの言葉数で、ぜひ通院を勧めてみてください。(本人を無理やり連れていくことは逆効果なので、控えましょう。)

まとめ

パニック障害は、その症状が理解されにくい病気です。
家族や恋人の方でも、どうすればいいのかわからず、悩んでしまうことがあるかもしれません。

しかし、安心感のある言葉を掛けてあげ、本人が自分のペースで治療を受けられる環境を、周りの人間が作ってあげることは本人にとっての支えになります。

身近な人がパニック障害になってしまうと、ご家族や恋人は戸惑い、なんとかしてあげたい気持ちでいっぱいになるでしょう。
ただ、身近な人こそ、本人を追い込むことなく、そっと見守る気持ちでいつも通りに接していることが、本人にとって何よりも大事なのです。

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